「……キョン、今からいくつか質問をするわ」 そうかい。したけりゃいくらでもすりゃあいい。ただな、ハルヒ…… 「答えないとか、逃げるとか、そう言うことが一度でもあったら、懲罰をくわえ るわ」 死刑じゃなくなったのか。 しかし懲罰ね………ハルヒ、別に普通の質問なら解答しないつもりはない。ない が、その前にだな………… 「いい?一つ目の質問よ。あんた………」 人の話を聞け。 質問を投げかける前に、やることがあるだろう。 「………なによ」 「そのナイフを床に置け!!!」 『チョコandチョコレート』 危なかった。 本気で生命の危機に晒された。 おい朝倉、俺を殺してもこいつは上機嫌になるだけだぞ。 「というか、死刑はやめたんじゃなかったのか?」 「まず左肩を一突き、次に右、その次は左足のアキレス腱………」 外出するときに服を着ていくのと同じくらい当然だみたいな口調でそんなことを 口に出すな。 そもそもそのナイフはいつの間にどこから持ってきたんだ? 「あんたがバカみたいにチョコ食べてるときに学食の調理場からせしめてきたわ 。ちょろいもんよ」 犯罪だぞ、それ。 「うるさい。団長を犯罪者に仕立てあげるな」 やめてくれ。クレイモア・ワンの指揮官みたいな声ではなすのはやめてくれ。 「……で?質問とやらはなんなんだ?」 「…そうね。じゃあ最初の質問。あんた、あのチョコどうしたの?」 んなもんしるか。 朝登校したら、机に山積みになってたんだよ。 「つーか、お前も知ってるはずだろうが。俺の机を見てないわけがないだろう? 」 こいつは俺の一つ後ろの席であるわけだしな。 「……そんなこと聞いてるんじゃないっっ!!!」 どっちなんだよ。 「あたしはあの大量のチョコレートは今どこにあるのって聞いてるのっ!!!鞄の中 にはいるわけないでしょ!?」 「お前の真後ろにあるぞ」 部室にはいるときに気づかなかったのか?壮大なチョモランマが形成されている ぞ。 鞄の中にさっき食べた量の五倍くらい。そしてここにその五倍。 要するに、弁当三個×五個×五個で、じつに見た感じ弁当七五個分くらいだ。 「………これ、あんたの…?」 ああそうだ。 「古泉君のじゃ…?」 悪かったな。 確かに俺も、なぜこんなにもらえたのかわからんが、そんな絶句までするこたな いだろ。 「………じ、じゃあ二つ目………あんたモテるの?」 それもしらん。 まあ現状をみる限り、大多数の人間はモテると判断するだろうな。 「……信じられない………」 ……そこまでいうか。 「だって、こんなバカキョンがモテるなんて………」 うるさいな。俺がモテて何が悪い。俺がモテる。実にいい話じゃないか。 「…………………もういい。聞かなきゃ良かったわ……」 ああそうかい。じゃ、俺はこれで。 「待ちなさい」 ぐお。首を絞めるな。後ろ襟はやめろ。 「まだ最後の質問が残ってるの。これを刺してもいいんなら、帰れば?」 ハルヒは自分の足下を指さし、さも当然のごとく、ニヤリと笑っていいやがった 。 誰か、こいつを止めろ。 「……さっさと最後の質問とやらをしろ」 「あんた、そのチョコどうするの?」 ……一つしか考えられんだろう。 食べる。それだけだ。 「じゃな、俺は教室に戻る」 チョコを平らげなくてはならんのでな。 俺は言いながら後ろを向き、部室を後にした。 ハルヒがどんな顔をしていたのかも知らずに。