終わらない紺乱
1 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:22:32
ξξo・-・)<あえて問うなら答えもしよう
      望むることはささやかなりし
      ネタを投稿出来る板があればいい
      そこにネタを投稿したいと思えればいい

と、また分りにくいもじリでやってまいりました。
すごく不定期更新になりそうですが、楽しんでいただければ幸いです。

2 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:24:30
「迷信」

フクイの地方領主の愛娘、アイ様はそれはもう我侭の生まれ変わりのような存在でした。
ハロー一座の講演を無理やり父に懇願しては
一座にしては異例の同じ土地での年2回の講演。
幸いだったのは、一座の講演は神がかりと言われるほどの舞台だったので
領民からは好評だった事。
一座にとってもフクイ家からの年2回の多大な謝礼金は、約束された収入として、
顔には出さぬが、内心大助かりだった事。

3 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:25:09
しかし、そんな我侭放題だったアイ様が、修道院に修行に行き、帰ってくるとあら、不思議。
神の奇蹟か、思慮をお持ちになって帰られたのです。

アイ様はハロー一座の講演も年に一回にとどめる事にし
また貴族としては異例、統治に口を出す初の女性貴族となりました。
地方領土だった事から風当たりは弱く、むしろ領民の評判も良い。
年老いた父は、いずれは他所から、養子をいれる算段は立てていましたが
アイがこんなにしっかりしてくれれば、どんな養子が来ようとも
フクイは安泰だと、深く気には止めませんでした。

4 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:25:54
アイはフクイに初めて小さな協会を立てました。
その教会のシスターは、しっかり者で、領民に慕われていました。
文句はまずシスターに打ち明ける。
下らないことでも打ち明ける。
シスターは何でも聞いてくれる。
間違っていれば諭してくれる。
いい方法を考えてくれる。
民の代表として領主に掛け合ってくれる。

しかし、シスターのいないところで皆笑いながら言うのです。
「悩み聞いてくれるのはいいんだけど、最後のお小言がなかったらなぁ」
そこで皆苦笑。
「いやいや、最近は、むしろお小言言われたくて教会に行くよ」
そこで皆大笑い。

5 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:26:38
その年は不幸な出来事がたくさん起こりました。
家畜の謎の大量死。作物の不作。

やがて、不穏な噂が流れるようになりました。
「黒い森」の老婆のせいではないか?と。

フクイの領土の外れ。
黒い森には、一人の敬虔な老婆が住んでいると言われています。
その老婆は、古よりの智恵を蓄えていて、
どんな病も、薬草を煎じて、治してしまうというのです。
しかし、この森に入って実際老婆に会ったという者は一人もいません。
一方、あの老婆の正体は山姥(ハッグ)だ。
山姥に会えば皆食い殺されるのだと。

6 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:27:25
アイはシスターを呼び出しました。
アイは困った時は必ずシスターに相談するのです。
リサ「まったく、下らない噂に付き合ってる前に
   いくらでもやることがあるでしょうが」
アイ「でもなぁ、リサちゃん」
リサ「ちゃんはやめなさいと何回言ったら」
アイ「二人きりの時ぐらい、いいやないの」
リサ「仕方ありませんねえ、話が進まないから、許します」
アイ(話さえぎってるのはリサちゃんの方なんだけど)
とか思いながらも、リサといる時だけ、世のわずらわしい事を忘れられるアイ様でした。

7 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:28:04
リサは徳高いシスターでした。
人望も厚いです。
しかし、彼女のその真っ直ぐな生き方は
教団上層部にはむしろ煙たがられていたのです。
リサはそんなこと知ってて、知らない風を装って、
教会も持たずに、民の中へ交わっていきました。
そんなリサをアイが招き寄せたのです。
迷信がまだまだ強い力を持っているフクイに新しい風をもたらすという、統治者としての考え。
しかし、単純にリサと共にありたいというのも本音。

リサはあっという間に民に迎え入れられました。
もちろん誰にでもうるさがられていますが、それもまた彼女の魅力。

8 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:28:35
アイ「というわけでさ、一度黒い森を調べてみるべきやと思うんやよ」
リサ「まぁ、私とアイが行けば、皆納得するでしょうからね。
   そうすれば、皆、前向きに対策に集中できるだろうし」

そういうことになった。

9 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:29:11
黒い森の最奥に古い一軒家があった。
ミキティ「さて、ここもそろそろ潮時かな」
荷造りを始める。
名残惜しいけれども、仕方無い。
領主の娘も最初は危なかしくって見ていられなかったけれど
シスターが来てから、落ち着いた見たいだし。
昔話はこの辺で消えることにしよう。
これから先、迷信は消えていくのみ。
新しい生き方を模索していくしかない。

10 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:29:53
アイ「レイナ殿いらっしゃるか?」
道先案内人として、狩人を雇う事にした。
レイナの一族は代々黒い森で狩を行ってきたらしい。
森のはずれで、良く気を失っていた民を連れ帰ってくる
ということを代々経験しているらしい。
レイナ「気が進まないっちゃ」
実はレイナは山姥が恐くて、爺さんに連れられていったことが何度かあるだけである。
アイ「この私が頭下げてるのに、ムキー」
リサ「こら!アイ、横柄な態度は駄目って言ってるでしょ?」
アイを落ち着かせた後。
リサ「あなたさぁ、伝統の儀式をまだやってないんでしょ?」
レイナ「そんなもん、無意味っちゃ」
レイナ家は代々黒い森の最奥の巨木に印をつけて来ることになっている。
レイナの今は亡き両親から、聞かされていたのである。
レイナが恐がって、やってくれないのが心残りだと。
リサ「私たちがいっしょなんだから、何も無い事を確認すれば
   今度生まれてくる子供に自慢できるんじゃないかなぁ?」
レイナは将来の自分の姿を妄想する。

11 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:30:30
・・・
レイナ「パパは一人で、あの黒い森を潜り抜けて、印をつけてきたたい!」
息子「すっげぇ、僕もいつかパパみたいな立派な狩人になってみせるよ!」
・・・
レイナ「うふ、うふふ、うふふふふ」
不気味に笑っているレイナ。

アイ「やばいがし、連れて行かんほうが」
青ざめるアイ。
リサ「見た目とは違ってかなり深い森らしいから、迷って干からびてもいい?」
皮肉っぽくいう。

レイナ「大船に乗ったつもりでまかせるたい!」
アイ「断れそうに無いがし」
アイは諦めた。

12 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:31:22
黒の森へ
アイ「しっかし、昼だというのに、暗いやよー」
リサ「外から見てると、こんなに深い森には見えなかったねえ」
レイナ「足元気をつけるっちゃ」

・・・
レイナ「森の入り口には番人の狼の群れが待ち受けとったたい」
息子「狼なんか一匹でも恐いよ!」
レイナ「安心するたい。パパはあっという間に狼のリーダーを見抜いたたい。
    パパはリーダー狼とにらみ合ったたい。
    するとリーダー狼はパパの前にひざまついたたい。」
息子「すごいや!なびかせたんだね!」
・・・
レイナ「うふ、うふふ、うふふふ」

アイ「ちゃんと案内してくれとるんがしか?」

13 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:32:02
・・・
レイナ「森の途中には、トロール達が待ち受けとったたい」
息子「トロールだって!一撃で殺されちゃうよ!」
レイナ「安心するたい。パパは目にも止まらぬ弓矢の早撃ちで
    数十人のトロール達の目を打ち抜いて、倒してやったたい!」
息子「すごいや、パパ、ただの狩人じゃなかったんだね!」

アイ「とうとう口に出し始めたがし」
リサ「耳栓でもしたら」

14 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:32:53
・・・
レイナ「森の最深部には竜が待ち受けておったたい!」
子供「竜の炎で、炭になっちゃうよ!」
レイナ「安心するたい。パパはドラゴンスレイヤーを抜き放って」
・・・

アイ「話がおかしくなっとるがし」
リサ「道はあってるみたいだからほおっておけば?」

15 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:33:35
・・・
レイナ「パパは王様の前にひざまづいたたい。
    王様は聖剣を、私の首のすぐそばへ向け、こう言ったたい。
    「汝をテラのピースキーパーに任命する!」
息子「すごいや、英雄だね!」

アイ「どこを突っ込んだらいいんがし」
リサ「書いてて止まらなくなった作者」

16 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:34:16
ミキティ「あらら、お客さんが来ましたか。でも残念。フクイの昔話は立ち去りますよ。
ミキティは遠めに見える3人達に投げキッスしながら、立ち去る所だった。

・・・
レイナ「くらえ!悪魔!」
レイナは目標も定めずに(いや悪魔に狙いをつけているらしいが)矢を放った。

アイ「私らの前ですごい不敬なことを」
リサ「気にしたら負けだって」

17 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:35:10
サク!
ミキティ「・・・」
尻に手をやる。
ミキティ「あら、私尻尾があったんだぁ」

レイナは突然現れた人影に襟首を両手で掴まれて宙吊りにされた。
ミキティ「ああん、尻尾だと?わけわかんねえんだよ、笑えるのか?面白いのか?」
レイナは呼吸困難で何も答えられない。
・・・
レイナ「息子よ、私は最後まで・・・」

18 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:36:03
アイ「止めた方がええんやろか?」
リサ「本人は死んでも悔い無さそうだけど一応。」

リサはコホンと咳払いし、突然現れた女性の気を引いたのを確かめて。
リサ「すいませんがお姉さん、お話をお聞きしたいんですが?」

ミキティはレイナをそっと下ろした。気絶している。
ミキティ「・・・なんかすごい疲れた。家に招こう。
     茶ぐらいしか出せないけど」

19 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:36:39
ミキティは茶を振舞った後、全てをのんびり話し出した。
レイナは相変わらず気を失ったままだ。
教団が出来上がるまでは、自分たちのような魔女は人々とつながりが細いながらもあった事。
その頃は実際治療もやったことがある事。
教団が出来て以降は、皆、人目を避けて生きるようになった事。
黒い森で迷った人間は催眠術で記憶を奪って、森の外れに置いておいた事。
リサ「ごめんなさい」
ミキティ「いや、謝ることないさ。世界はそうやって、変わっていくもんだ。
     私らはのんびり、共生の仕方を模索してる。それも楽しいもんだ」
アイ「でも、記憶を奪ったのに、何で、噂が立つんがしか?」
ミキティ「記憶ってさぁ、私らにとっても底知れないものなのさ。
     思い出せないはずなのに、脳には、何かしこりのようなものが残る。
     おばあちゃんが炉端で子供たちの喜ぶ話を聞かせようと創作する時
     ふと、そんな話が出来上がるんだろ?
     病気で苦しむ人が、夢を見たのかもしれない。夢を描いたのかもしれない。
     そういう話がどんどん溜まっていって、一つの物語が出来上がったんじゃないかな」
アイ「なんで老婆なんがしか?」
アイはミキティを惚れ惚れと見つめる。
ミキティはそれに気を良くしながら。
ミキティ「全部が全部荒唐無稽じゃ冷めちまって聞く気にもならないだろ?
     不老不死の女がいるより、年老いた老婆の方がしっくりくるのさ」

20 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:37:29
アイ「不老不死?」
アイの顔が険しくなった。
ミキティはうっかり口がすべった事に気がついた。
アイ「ずっと、魔女やと思っとったから気がつかんかったがし・・・」
アイが剣を構える。
ミキティは頭を振って、ため息をついた。
ミキティ「やっぱ、会わずに去るべきだったなぁ」
さびしそうな表情。
リサ「ちょっとアイちゃん落ち着いてよ。魔女の秘術かもしれないでしょ?」
ミキティ「いやお姫さんの想像どおりだよ。吸血鬼さ」
アイ「覚悟はしておるようやね」
ミキティ「覚悟なんか生まれて、人の存在と、人がどう思ってるのかを知った時から」
リサ「アイちゃん待ってよ、悪い事なんかしてないじゃない」
リサは目まぐるしく智恵を絞る。何かこの状況を変える術は?
アイ「悪いとかいいとかじゃないがし。こればっかりは」
アイの中でも葛藤はあった。しかし民の安全を考えるものは時に自分を殺さなくてはならない。
いやこの場合は人としてか。
ミキティ「そうだね。神様が決めた事は絶対だもんね、人には」
何もかも知り尽くした、傍観者の視線。自分の死すら傍観するのか?

21 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:38:07
リサ「アイちゃん。神様にお伺いを立てて!」
最後の賭け。
アイ「そんなもんせんでも答えは一つがし」
迷いは死につながる。アイは決意を固めていた。
リサ「してくれなかったら絶交よ!」
アイ「・・・リサちゃん」
アイの顔が苦しみに歪んだ。
リサ(ゴメン。こうでも言わないと)
アイ「わかったがし、逃げないと誓うか?」
ミキティ「ああ、なんなら縛ってもいいけど。効果ないかもしれないけど?」
もちろんただのロープなど紙も同然。
リサ「ごめんなさい。聖水は持たせてもらうわ」
ミキティはそんなリサを気の毒そうに見つめる。
両手にそんな風に持ってたら投げられないぞ、やさしいシスターさん。

22 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:38:50
アイが印を結び詠唱を始める。
一度とは言え天使をその身に宿したアイには、いくつかの奇蹟が行えるようになっていました。
アイ「我が守護天使。同じ真の名を持つ天使よ!邪悪なる者を看破したまえ!」

ミキティに向かってソナーのように聖なる光が降り注ぐ。
ミキティは唇を噛む。
攻撃系の魔術じゃなくても気分のいいものではないな、やっぱ。

23 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:39:28
アイ「・・・そんなはずないがし・・・」
呆然とするアイ。
リサ「どうだったのよアイちゃん」
ミキティは二人を見つめる。お二人さん、油断しすぎ。
アイ「邪悪な反応はないがし」

ミキティは心の中で、クスリと笑う。
邪悪看破って魔術は、根源的に邪悪な存在を見分けるものじゃないんだよ。
悪意があるかどうかを見分けるだけ。魔術の勉強をしておくんだな。
そもそも根源的に邪悪なんて判定を誰が下せるんだ?
神?そいつが決めたら絶対なのか?そいつはいつどうやって聞いたんだ?
信じる理由は?

リサがぺたりと尻をつく。大きく息を吐き出す。

24 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:40:08
アイ「まだ認めたわけじゃないがし。今は手を出さんがし。」
ミキティ「安心しな、どうせ、出て行くところだった。」
アイ「早くするがし」
ミキティ「わかってるさ」
申し訳無さそうなリサの顔を見て、つい微笑むミキティ。
ミキティ「お前がそう悔やむなよ。私はいつだってうまくやってきた。これからも変わらない」

ミキティはそそくさと歩み去った。

25 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:40:44
アイ「これで、噂は止まるがし」
リサ「来ない方が良かった。ううん。もっと後で来れば良かった」
そんなリサの耳元に、ミキティの声。
ミキティ「久しぶりに人と話せて楽しかったぞ」

リサはあたふたとあたりを見回すが、何も見つからなかった。
探すのはやめて、話してたときのことを思い出す。
ついさっきの事なのに、もう何週間も前に話したような気分。
そうだね、ミキティさん、すごく楽しそうにしゃべってたよね。
私も楽しかったよ。

3人は帰途につく。
レイナの妄想がまた始まった。



26 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 01:59:36
さて、「天使」「共生」のアナザーストーリをお送りしました。
実は、こっちのアイちゃんの原型の方が「天使」より古かったりする。
ミキティは俗に言う「真祖」って奴ですな。
と言いつつ、次に共生に着手する時にはあっさり、無かった事にするかもしれませんが。
向こうは「今の所」予備知識無く読める単発スレにしたいとか考えてて
こっちに発表させてもらいました。他意はありません。
僕の読者こっちに来てるっぽいしw
今回のMVPはレイナ。
使いにくいから避けてたキャラなんですが、なんとなく案内役で出してみたら
黒の森のうざい長い探索を書くかわりに、レイナの妄想で間をつなぎ
ミキティとの出会いを演出し
オチまで担ってもらう大活躍でした。
これからもレイナを出せればいいなと思います。
では、今後ともよろしく!

27 名前:名無しなの :2005/10/13(木) 13:20:26
そうかあの2つはこうして繋がってたのか

28 名前:名無しなの :2005/10/13(木) 16:45:29
紺乱キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

29 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 18:42:52
>>27 まぁ人間時間で1000年以上離れてるから、大丈夫だろうとw
   読者サービスであり、ネタ書きとしてのお遊びでもあり

>>28 やっぱり読者キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
   今後ともよろしく

30 名前:名無しなの :2005/10/13(木) 20:07:07
紺乱はココのスレもアンテナ登録しないの?
熊板に理解有ると思うからアンテナ登録してくれるかもよ

31 名前:紺乱 ◆.jBxvx1VDA :2005/10/13(木) 21:10:18
>>30 向こうのネタスレはたんたんと短編を投稿。
   読者と馴れ合いたければ楽屋でと住み分けています。
   
   こっちは比較的更新速度が遅くなるだろうし
   「今の所」読者と雑談してもいいなと思っていますので
   アンテナに登録するのは、やめておこうかなと。

32 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/17(月) 01:49:01
勝手に熊板誕生おめでとう企画
「熊」をタイトルに使ったネタを書いてみる

33 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/17(月) 01:49:50
「狼と羊と鳩と熊」

今回の登場動物

ミキティ 狼 意地悪だけどさっぱり系 カッコ可愛いがモットー。

こんこん 羊 ぼけーとしてる 何かいつも考え事してるらしい。

ヤグチ 鳩 おしゃべり 正義感の塊 しかし力は無い。

ヨシザワ 熊 ハロモニの森に危機あるとき颯爽と現れる鉄腕の守護神 出番未定。

レイナ 仔虎 ミキティに憧れている

34 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/17(月) 01:50:46
ハロモニの森は今日もいい天気。

今日もこんこんは日向ぼっこしながら、白昼夢にひたっています。
ヤグチはそこが私の指定席と言わんばかりに頭にとまっています。
ヤグチがやくたいも無い事をしゃべりまくり、時々こんこんが相槌を打っています。

35 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/17(月) 01:51:46
そこへ毎日欠かさない日課をやりに来たミキティ。

ミキティ「よぉ!こんこん。今日もいい感じだな!」
ミキティはこんこんのふかふかの毛を触るのが大好きなのです。

ヤグチ「こんこん嫌がってるだろ!やめろよ!」
ヤグチさんは何かと口を挟みます。

こんこん「別にかまいませんよ」
人と住んでる仲間は毎年刈られちゃうんだよねえ、私は幸せだなぁ。

ミキティ「ほーれ、こんこんはむしろ喜んでるんだよ」
へっへーんとしたり顔のミキティ。

ヤグチ「毎日毎日しつこいんだよ!こんこん、断れないんだったらおいらが止めてやるぞ!」
翼を広げて威嚇しますが、こんこんの角と角の間より小さくて、全然恐くありません。

こんこん「いえいえ、本当にいいんですよ、でもヤグチさんありがとう」
こんな毛でも誰かを喜ばせて上げられるのならなんて幸せな事なんだろう。
ヤグチさんにこんな事でも心配してもらえてなんて幸せなんだろう。

36 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/17(月) 01:52:46
ミキティ「なんだぁヤグチ、もしかして妬いてるのか?触ってやろうか?」
ミキティの口の両端がニュウっとつりあがっています。

こんこん(なんて意地悪な笑顔、でもなんて魅力的なんだろう。
おっと、そんなこと考えてる場合じゃない)

こんこん「ミキちゃん、ヤグチさんを悪く言ったら触らせてあげませんよ」
こんこんは怒ってみせますが、泣きそうな顔にしか見えません。
私って怒るの苦手だなぁ。ヤグチさん大丈夫かなぁ。

37 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/17(月) 01:54:03
ミキティ「まぁまぁそう言うなよー」
こんこんにウインクしながら、またふかふかの毛を触りだすミキティ。
ボヨン ボヨン
ミキティの両手がやわらかい「大きな」二つの何かに触れました。
こんこんが顔を赤らめています。

ミキティ「・・・」
ミキティは突然無表情になって立ち去りました。

ヤグチ「どうしたんだミキティ?こんこん何だと思う」
頭ががこんこんの頭に付きそうなぐらい、首をかしげるヤグチ。

まだ顔を赤らめているこんこん。
こんこん「さぁ、なんでしょうか?」

そんなことあっという間にどうでも良くなって、
またヤグチのおしゃべりが始まりました。

38 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/17(月) 01:55:09
崖っぷちで、夕日を見ながら、たそがれるミキティと
憧れのミキティと二人きりになれて有頂天のレイナが居ました。

ミキティ「あのなぁレイナ、女の価値ってのは、胸の大きさで決まるものじゃないんだぞ。
     こんなこと言っても、まだお前には分らないかもしれないけどな」

レイナ「?」

39 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/17(月) 01:56:02
今日のヨシザワさん

鉄腕の両の手の平を押し付けあってバストアップに励んでいます。



40 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/17(月) 02:00:39
このスレから僕のネタを初めて読まれる方に注意。
前のネタと次のネタに「すごく」落差があったりするのは仕様ですので
慣れていただければ幸いです。
今回のネタですが・・・深く考えないようにw

41 名前:名無しなの :2005/10/18(火) 07:11:41
うわぁ
イイなぁこの世界。

で、熊の吉澤さんの出番が少なすぎるわけだがw

42 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/22(土) 22:10:17
>>41 実は連載能力ついたら「羊」でやろうかなとか妄想してたネタなんですけどね
もし、気に入る人がいらっしゃれば、参加スレとして使ってもらってもいいつもり

ヨシザワさんは紹介で、未定となっているように出す予定無かったんですよ
果たして、出したのと出さなかったのと、総評でどっちが良かったのやら

43 名前:名無しなの :2005/10/23(日) 11:16:27
>>42
うまく大オチになっていて面白いと思った

44 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:22:56
>>43
うまくいっていれば幸い。ネタ書くとこういう予定にない出来事が起こるから楽しい

45 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:23:24
「共生の書」

大きくなりたいのなら
 まず大きい服を着なさい −Kー

第一章 「紺野」

46 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:23:55
「朔」

紺野は中学に入った頃から気だるさに悩まされるようになった。
朝起きれば、両手がしびれていることがある。
朝礼で校長先生の長話を聞いている際中、倒れた時、初めて貧血であると思い至った。

特にダイエットなどしているわけではない。
貧血だと気付いてからは、むしろ母が栄養に気を使って
御飯を作ってくれている。
いよいよ駄目だと、病院に行く。
しかし、どの処方も効果が現れない。
原因にしても、ストレスがどうとか思春期がどうとか要領を得ない。

47 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:24:34
医者は、紺野のカルテを見つめつつ、とあるレポートを引っ張り出す。
ミスカトニック大学病院ヤスダ博士によるガイドライン。
日本のほぼ全ての病院に、厳重にそれは保管されている。
二つをじっくり吟味する。
医者「・・・あれ、試してみるか」


医者は新しい薬を処方した。
この錠剤が今までとは違い、効果を発揮した。
しかし、全快とは言えず、定期的にその錠剤を飲みつづけてマシといったレベル。
まぁ日常生活はぎりぎり保てるだけまだいいんだと紺野は思うことにした。

48 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:24:59
医者は、また紺野のカルテとレポートを吟味する。
3ヶ月、紺野の状態をガイドラインに従って診断し、報告書をまとめてきた。
医者は某所へ電話する。
医者「・・・そちらにおまかせすべき患者のようです・・・」


ある日、先生から都内の野末蘭総合病院を紹介された。
サイコセラピーで、ストレスの原因を取り除いてくれるのだという。
またここでは出せない薬も処方出来る権限を持っているのだとか。

医者「紺野さん」
紺野「はい」
医者「そこはかなり専門的な病院なんで家族以外には絶対言わないでね。
   名医だとか世間で評判になってしまうと普通の病院で済むはずの患者さんが押しかけて
   本当にそこが必要な患者さんが、診てもらえなくなってしまうから」
紺野「はぁ、まぁなんとなく分ります。」
変なの?

49 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:25:17
紺野「この先・・・かぁ」
明らかに、普通の人は住んで無さそうな恐そうな町並みになってきた。
紺野「やめようかなぁ」
紺野がびびり虫に負けそうになっていると。

?「なんか困ってる?」
きれいな、でも気の強そうな女性に声をかけられた。
紺野「あのお、この病院なんですけど」と紹介状を見せる。
?「ああ、私の勤めてる病院ね、いっしょに行こうか」
紺野「ありがとうございます。でも、この通り大丈夫なんでしょうか?」
?「はは、ガラ悪そうだもんね。でも大丈夫だよ。
  この町で筋の通らない事する奴は追い出されるから。
  あなたいい子そうだから大丈夫」
紺野「ならいいんですけど」
?「じゃぁ行こ」
女性に手を取られて歩き始める。
通りには普通っぽい人が全然いなくて、ここって本当に東京なのかと眼を疑う。

50 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:25:37
そして大きい病院に辿り着いた。
野末蘭総合病院。古そうな病院。
?「あそこ受け付け。じゃ、私仕事あるから」
手を振って笑顔で歩きさる。
紺野「ありがとう御座いましたぁ」
安心したら、名前を聞くのをすっかり忘れている事に気づいた。
失敗したなぁ。かっこいいお姉さんだったのに。
すごく後悔しながら、受付へ。


ヤクザっぽい人とか、どこの言葉なのかすら分らない人たちの中で
不安がまた湧いてくる中、居心地悪く待ったあと、名前を呼ばれて、診察室へ。

紺野「お願いしまーす」
?「はーい」
と振り返ったお医者さんは
紺野「ああ!」
美貴「藤本と申します。よろしく!」

51 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:25:59
紺野の口の中を診る。
美貴(牙は小さいけど生えてきたみたいだね。多分戻らない。どのレベルで安定させられるかな)
牙といっても物理的な歯ではない。それは霊的なもの。能力の有る者、ないしある条件下でないと見えない。
カルテを書きつつ。
美貴「じゃぁ窓口でお薬もらって帰ってね。色が赤黒いのは慣れてちょうだい。
   どうせ容器からもストローからも見えないし。
   その代わり人前でむせたら、あなた病院にかつぎこまれるわよ」
紺野「はい、分りました」

素直な返事だこと

藤本「最後の方はその赤黒い色をすすぐ効果もある別の薬になってるから
   口ゆすぐ必要は無いからね
   容器は次に来る時必ず返却すること。以上」
紺野「あのー」
もじもじしている。
藤本「質問あったらどうぞ?不安な事は一つ残らず消さないとね」
紺野「下のお名前聞いていいですか?」
顔を赤くしている。
藤本「・・・美貴」
何を聞くかと思えば。もっと大事な事聞くだろ普通。天然か?
紺野「美貴先生って呼んでいいですか?」
藤本「好きにしたら」
最近の女子中学生はこうなのか?
紺野「ありがとう御座います」
元気一杯の返事。

これが永い付き合いとなる美貴先生との出会いであった。

52 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:26:20
「蜜月」

美貴先生に処方してもらった飲み薬は効果てき面だった。
というか飲んだ直後に、ふらふらだった体が元気を取り戻していくのが目に見るように分る。

月に1回診察に行っては健康状態を見てもらったあと
飲み薬を4つもらって帰る。週1回一本飲み切る。
前の容器は必ず返却する。
えらく、しっかりした構造の容器である。

紺野「その治るんでしょうか?」
藤本「絶対治るよ!」
あなたの場合一生必要になると思う。
紺野「・・・治っても、来ていいんでしょうか?」
紺野は美貴先生の表情を伺いながら聞く。
藤本「?・・・何で」
紺野「先生のファンです!」
顔を赤らめる紺野。
藤本(・・・幸せな奴だな。中学生だしな。しっかし女にばっかもてるな)
藤本「そんなに会いたいなら、この病院に就職すればいい」
紺野「本当ですか!私がんばって勉強します!」
無邪気に喜んでいる紺野を顔では微笑みかけるが内心は暗澹としていた。
(まぁ何にせよ、運良く、薬のいらない体にならない限り
私たちと関わって生きていくしかないからね。)

53 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:26:53
半年後
最初こそ、快方に向かっていると思われた紺野の貧血。
体育の後、視界がもわもわする。脈といっしょのタイミングでゆがむ。
何か細かいものがチラチラ舞う。
たまたま、寝不足とか激しい運動とか重なったんだろう、と自分に言い聞かせる。
しかし、間違いなく薬の効果は一週間持たなくなって行く。

紺野「今月は、6日目目になるとしんどいです」
藤本「つらい?」
紺野「はい。昨日はなんとか我慢したんですけど・・・
   私悪くなってるんでしょうか?」
藤本「育ち盛りで、体が追いつかないだけ。安心して。
   そうだね。ちょっとだけお薬変えてみるから」
紺野「はい。あのー」
もじもじしている。
藤本「何?言いたいこと有るなら、さっさと言いなさいっていつも言ってるでしょ?」
紺野「携帯で写真撮っていいですか?」
藤本「・・・いいけど、見せびらかさないこと」
紺野「はい!」

54 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:27:09
藤本「やっぱり、進行してるか」
仕方の無い事だと言えばそうなのだが。
徐々に濃い飲み薬を処方しつつ、慣れた事とは言え、いい気分ではない。
自分を信頼しきっている紺野。
自分の診察を信用している紺野。
自分を大好きな紺野・・・。
藤本「いい子ちゃんは特につらいな」

55 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:27:26
さらに2年後
とうとう紺野には血液パックを与えることとなった。
徐々に飲み薬を変えていったため
それが血の味だと、紺野が不意に気付いて不安を覚える事も無いだろう。
最初に与える飲み薬が赤黒いのもそのための前振りである。

口の中を診てみれば、しっかりとした牙が覗いている。

紺野「どうですか?」
私が明るい未来しか言わないと信じきってる目、笑顔。
藤本「思春期を越えたら、徐々にまた薬を弱くしていけるよ。」
紺野「はい!」

紺野は無意識に美貴先生とおそろいのリングを撫でている。
自分で買ってきて、片方を美貴先生にプレゼント。
美貴先生は全快したら、お返ししてくれると約束してくれた。


紺野の帰った後、藤本の眼は無意識に窓から月を探す。

打ち明けるタイミングを慎重に測るしかない。

56 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:27:53
「夢月夜」

明日は満月。藤本は紺野家に電話した。
親からつないでもらう。
紺野「かわりましたあさ美です」
藤本「明日夜、迎えに行くから」
紺野「なんですか?」
不安げな声。
藤本「全快祈願に食事に連れてってやるよ」

一転して声が高くなる。
紺野「本当ですか!楽しみにしてます!」
キャーキャー言ってる紺野を落ち着かせた後電話を切った。

57 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:28:10
紺野はうきうきしながら部屋中に何着も服を並べては、ああだこうだと着比べた。
興奮が冷めやらずなかなか寝付けない。


次の日、藤本先生が高級そうな車で迎えにきた。
私車の事良くわかんないけどかっこいい。
それに藤本先生、スーツを着こなして、男装の麗人って感じ。
私がんばっておしゃれしたけど、隣に立つの恥ずかしい。
藤本「可愛いじゃん」
紺野「美貴先生もすごく・・・素敵です」
藤本「行こうか」

58 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:28:30
しゃれたレストランで食事。
紺野はほっぺたに手をついて本当に幸せそうに料理を食べている。
藤本(食事中は、私も気にならないのな)ちょいと苦笑。

食後ドライブとしゃれこんで、人っ子一人いない夜景のきれいな場所へ。
車から出る。二人して夜景を眺める。
うっとりしている紺野。
紺野「私今夢見てるんじゃないかなって。それぐらい幸せです」

藤本は真顔になる。
藤本「紺野、今から何が合っても、冷静にいてくれないか?」

紺野「え!その・・・」
あきらかに何か勘違いした戸惑いを見せる紺野。
藤本さんだったら・・・いいよね。
覚悟を決める。
紺野「はい」
恋する乙女は何も恐くない。

59 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:28:56
藤本(そのまま夢見てる間に、お望みどおりキスしてそのまま何もかも終わらせてやりたいよ)
世迷いごとを振り払い
藤本「私の口を見て」

ますます勘違いに拍車がかかる紺野。
私の心臓張り裂けちゃうんじゃない?
きれいな唇。それが開いていく。月が触から顔を出していくように。

そこに現れた物は・・・

紺野は夢見る気分だったたため、最初まったく異常に気づかなかった。
素敵な八重歯。あの歯で・・・
いけない妄想を膨らませた後。
ん?私妄想と現実がごちゃまぜ?八重歯がすごく長くない?
眼をこする。いつも検診で会う美貴先生の八重歯は普通だったはず。
ついさっきレストランでワインを飲んでた時だって、普通だったはず。

紺野「あははは、もー、そういうことですか?」
紺野は突然笑い出した。
私をからかおうとして、キスする振りして、ドラキュラグッズなんて
なんてベタなんだろう。でもそういうお茶目な所があったなんて
私、また一つ美貴先生に好きなところ出来ちゃった。

60 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:29:16
美貴「紺野。自分の歯を鏡で見てごらん」
満月の明かりのもとでね。
美貴が鏡を手渡す。

紺野「なんですかー、またなんか企んでるんですかー、いいですよ、のりますよ!」
紺野は微笑みながら鏡に向かって、口を大きく開いた。

・・・
ん?鏡に仕掛けでもあるのかな?
自分にも牙のような犬歯があるではないか?
鏡の角度を変えたり、他の物を映してみる。鏡は普通のようだ。
おそるおそる牙を触ってみる。すり抜けた。

・・・
私、夢見てるの?いつから?

61 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:29:32
美貴「私のも触ってごらん」

紺野は一瞬恐怖に襲われたが、美貴先生に見つめられると不思議と心がしびれてしっかり考えられなくなる。
それでも手を伸ばすのは恐い。そこに行ってはいけない。そこに行ったら戻れない。

美貴先生に右手を捕らえられる。そして人差し指をつままれると
美貴先生の牙へとそっと導かれた。
美貴先生の牙に触れる!・・・すり抜けた。

紺野の頭は考える事をやめた。夢なのだ。こんなのは現実のはずが無い。

62 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:29:52
美貴先生は自分の人差指の腹を牙に軽く押し当てた。
実体の無いはずの牙なのに、指の腹からプツリプツリと血球が出て膨らんでいきやがて流れる落ちる。

血を見た瞬間、紺野は異様な興奮に襲われた。

あ れ が 欲 し い

その直後襲い掛かる嫌悪感。

ぶつかり合う二つの意識。

美貴先生が人差し指を向けてくる。顔に向けてくる。唇へ向けてくる。
紺野は身動き出来ない。

63 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:30:14
唇を押し割って中へ浸入してくる、美貴先生のきれいな人差し指。
唇を垂れる美貴先生の鮮血。
舌を撫でてゆく美貴先生の指。
舌に染み込んでいく美貴先生の血。
甘美な味。紺野の全身を、身を凍らせるようなおぞましさと
全身を熱く火照らせる快楽が同時に襲った。

このまま美貴先生の指を受け入れ、血を思う存分味わいたかったが
体中から快楽のせいで力が抜けていき腰から崩おれる。
そのくせ、力はみなぎっている。

紺野のやわらかい唇の間から、唾液と血の入り混じったものを糸引きながら
美貴先生の指は抜けていった。
その光景をうっとり見つめながら紺野は夢の世界をどこまでも落ちていった。

64 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:30:46
「夢また夢」

私は美貴先生にお姫様抱っこされて助手席に乗せられた。

本当だったら大喜びする所だけど、私はまだ夢を見ていた。

帰る道すがら、美貴先生がずっと独り言を言っていたようだが
私の耳を右から左へと通り抜けていくだけ。

私の家に着いたが、あいかわらず私は人形のように動けない。

また美貴先生にお姫様抱っこ。

玄関の前でそっと降ろされる。上のほうから玄関のチャイムの音がした。

母親が出て、なんか美貴先生と話している。

美貴先生がまたお姫様抱っこして、母に先導されながら
私の部屋へ、私のベッドへ。
誰か部屋から出て行った。
私は美貴先生と二人きり。
美貴先生が、私の顔を見ながら何やら、両手の指をひらひらさせて何やら囁いている。

私は夢を見ているのに、酷い眠りが襲ってきた。

眠りに落ちる直前、美貴先生が
「いい夢をごらん」
と言ったような、そうでないような。

65 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:31:03
・・・

あさ美は目覚めた。
夢の中で美貴先生に自分の事を説明されていたような気もする。
いや、車の中で、言っていた話を夢として見たのか

何にせよ、私は引き返せない真実を知ってしまったのだ。

両頬を何かが止め処なく濡らした。

でも・・・

美貴先生がそばにいてくれるのなら・・・

私はもう一度眠った。

まだ現実は私に受け入れ難かったから。

やさしい夢が私を癒してくれるまで。


第一章「紺野」完

66 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/24(月) 20:38:17
さて、「共生」の長編化に取り組んでみようかと思います。
長編とは言っても、「短編小説群」という形になるかと思いますが。
果たしてどこまで風呂敷広げられるかを、楽しんでみようと思います。
気長に、乞うご期待

67 名前:名無しなの :2005/10/25(火) 00:26:25
共生キタ----(AA略)----!!!!
鳥肌立った。

68 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:31:51
>>67 鳥肌立って頂けるなんて、ネタ書き冥利に尽きます。
では第ニ章にまいります

69 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:33:05
第ニ章 「レッドムーン」

「パピヨン」

圭織は今日も疲れた男たちを歌って惑わせる。
初めて水商売に飛び込む際、嫌悪感がなかったと言えばうそ。
しかし、お客さんに誘われて、照れながらも歌った事から道は変わった。
マスター自ら、歌を聞かせるクラブへ移籍を推薦してくれて
皆から祝福されて送り出された。
そして、圭織に求められた歌とは?

 レッドムーン
高みの見物をしゃれこんでるくせに保護者ぶる
断りも無く全てをさらけ出してしまう月
消してしまいたいのに 手が届かない
好きなだけあざ笑っているがいい
いつか負けないぐらい笑い返してやるから


「あんたの歌はいいねえ、何でこんなに哀しくなるんだろう」
「哀しいのに癒されるのは何故なんだろう」
「若いのにブルースをこんな風に歌えるなんて、こんな世界にいるべきじゃないよ」
「でも、売れちゃったら、今時ブルースなんて歌えなくなっちゃうよ」
「あんたの歌を必要としてるのは私達なんだよ」

70 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:34:11
ブルース、それは19世紀の末頃、ミシシッピー州の黒人達によって生み出されたんだってね。
差別を受けながら、綿花畑などで重労働に従事し、
苦しい生活を送っていた黒人達の心を癒すための音楽だったんだって。

そんな来歴を聞くと圭織はひどく皮肉に感じる。
そりゃ、うまくもなるはずよね。

でも、基本的にシンプルで楽しい音楽だって言うじゃない。
そういう気分で歌えるようにならないとね。

そして、今晩も熱烈なファンであるパトロンの一人を自宅に招く。
別にそういう関係を持つわけではない。
酒をたしなみながら、談笑するのみ。
誘われた男の一人として、圭織を抱いたのだとうっかり話す奴が一人としていない所を見ると
それは間違いないようだ。
男とは必ずどこかで自慢する生き物なのだから。

71 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:34:27
後藤「目標、発症反応見当たらず。観察打ち切りますか?」
藤本「状況的には、彼女の可能性は限りなく高いんだけどね・・・。
   もう少し続けてくれる?」
後藤「了解」

72 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:34:54
「記憶」

父「化け物だろうが!」
酔っ払った父の怒声
母「圭織の前で言わないで、ごめんね圭織、のんちゃん抱いて、部屋に行ってて」
いつ終わるとも知れない、両親の喧嘩。

圭織の幼い頃の記憶。何を争っているのだろう?
赤ん坊ののぞみを抱きながら、自分の部屋へ避難。

圭織「お父さん恐いねー」
何も分らずにすやすや寝ているのぞみの頬っぺたをつんつんしたり。

この後父は家に帰ってこなくなった。

そして、再び帰ってきたとき・・・

73 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:35:24
「姉妹」

朝、妹のためのお弁当を作る。
のぞみ「おはようなのれす」
圭織「おはよう。朝御飯もうすぐだからね」
のぞみ「出来上がるまで、忘れ物ないか確認するのれす」
圭織「えらいぞ、のの」

姉妹二人の二人三脚。
私はちゃんとお母さん役出来てる?
お父さん役も出来てる?
お姉さんとして身近に近づけてる?
ののは本当に聞き分けが良くて助かってる。
まだまだ我がまましたい年頃なのにね。
反抗期が無いのは問題なんだっけ?
帰って来ると、学校であった事を元気良くほんと楽しそうに教えてくれてから
友達と遊びに行く。
学校ってそんないいことばっかりじゃないでしょ?
遊びから帰ってきて、また友達とどう遊んで楽しかったのか教えてくれる。
たまには喧嘩ぐらいするんじゃないの?
お手伝いも楽しそうにしてくれる。笑いながら、お姉ちゃんを楽しませてくれる。
することがないと肩叩きしてくれたり遊んだり。
無理してない?


のぞみ「お姉ちゃんおやすみー、いってきまーす」
圭織「おやすみ、いってらっしゃーい」
私は夜のお仕事だから、のぞみを送り出した後寝る。
だからこんな一風変わったあいさつ。
一度意地悪な男の子にからかわれたけど、言い返したうえ、男の子泣かしちゃって。
強いね、のの。私に心配かけたくないんだよね。
でも、なんでも打ち明けていいよ。時には泣いてもいいよ。

74 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:35:43
後藤「妹のほうの監査許可おりるかな?」
藤本「そっちの線があったか・・・。申請するから、追って連絡する」
後藤「了解」
吸血鬼監査を含む一切の吸血鬼及びその周辺事態はアーカム財団の
7人委員会によるトランシルバニア条約で固く規定されている。
違反すれば、厳罰を持って処せられる。
まぁ財団がなければ、人間との間に、協定なんぞ、まかり間違ってもなかっただろうから仕方無い。
むしろ財団には感謝こそすれ、恨む筋合いはひとしずくとてない。

そして、妹の監査許可がおりた。
後藤「・・・ビンゴ。やな案件になりそうだ」
後藤はため息一つつくとすぐ気持ちを切り替えた。
藤本は良く言うものだ。そこでためらいがなくなったら終わりなのだと。
後藤は人間らしいのだと。
後藤「人間らしいねぇ。・・・まぁそれもいいや」

75 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:36:16
「好敵手」

後藤はクラブの客として、潜り込む。
酔っ払ってノリノリの振りをして、ロックを歌う。
ただの姉ちゃんだと思っていた客たちが、注目し始める。
客の心を掴んだ所で、止まらない振りして(いや実際乗って来たのだが)
ブルースを歌う。

圭織のブルースは人を心底から哀しくさせる。
後藤のブルースは一線突き抜け、そこから明るく振舞う人の極地の姿がある。

ブルースが終わり拍手喝采。
後藤(客の耳が肥えてるところで歌うのは気分がいいね)
自然と笑みもこぼれる。

圭織は突然のライバル出現にも眉一つ動かさず、やさしく微笑みかけてきた。
圭織「一人で歌ってると煮詰まってしまう時があるの。あなたはまだ私の踏み込めない所まで行ってるのね。
   私はまだそういう風に歌えないの。でもあなたのおかげで何歩も進めたかもしれない。」

後藤は両手を前で振り振り、初めて誉められた子供みたいに照れまくる。
後藤「そんな、私のはカラオケで好き勝手歌ってるだけだから
   人を楽しませてる人なんかに全然適わないよ」
一瞬任務を忘れてそうになったが藤本の睨んでる顔が脳裏をかすめて、気を引き締める。

圭織「今日はあなたへのお礼も込めて歌わせてもらうわ」

76 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:36:37
そして今度は圭織が歌う。
皆聞き惚れ、黙り込む。そして、一言酒を注文する。

どっちが良いというものではない。
強いて言えば、後藤のほうがブルースとして本来の姿に近い。
だが、このクラブに集うものは、圭織に惹かれるのだった。

圭織「あなたとたくさん話したいことがあるの今晩お時間ある?」
圭織の方から積極的に迫ってきて
後藤は願ったりだが、正直気圧される。

男「あらあら、今晩は、阿久津さん振られましたなぁ」
一同が笑い
阿久津「いやいや、あんな女性と比べられたら、走って逃げますよ」
それに笑いつつも皆一様に同意。

圭織「あ!すいません。阿久津さん」
圭織はついうれしさのあまり大切なファンをないがしろにした事を心の底から後悔した。
阿久津「構いませんよ。圭織さんに謝られたりしたら、ますます居所が」
ここで皆大笑い。
阿久津「そうだ、今日は一曲多く歌ってくださいよ、それならプライドを保てますから」
この提案に皆拍手。

圭織「それでは、阿久津さん、リクエストに答えますよ」

阿久津が照れくさげに指定したのはもちろん圭織が初めて自分で作詞作曲した「レッドムーン」

77 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:37:03
「今宵の酒は」

そして、後藤は香織の家へ招かれた。

圭織が手馴れた調子でお酒を用意し、軽く談笑した後。
圭織「ごめんなさい。ちょっと妹の様子を見てきますので」
後藤「どうぞどうぞ、私も天使の顔を見たいなぁ」
圭織がちょっと困った表情をしたのを見逃さず
後藤「いえいえ、初対面が寝顔だなんて、レディに失礼なことしないよ」
圭織「では、すぐ戻りますので」

後藤はお酒に気を取られる振りしながら圭織が安堵の表情を浮かべたのは見逃さなかった。
今日は、自分の血をあげるんだな。

戻ってきた圭織。
圭織「ごめんなさいね、お酒違うのどうかしら?」
後藤「いえいえ、そんなに強くはないよ、それにズブロッカ私大好きなの。」
一度に吸う量は、かなり少ないな。いい所でうまく安定したもんだ。

後藤は圭織と酒を飲み会話を弾ませながら、お互いの歌に対する熱い思いを語っていく。
酒を飲んでいることもあって、どんどん壁は取り払われていく。
後藤は楽しすぎてつい職務を忘れそうになりながらも巧みに話題を転がしていく。
圭織はこのあったばかりなのに、10数年来の親友のように感じ始めた女性に
全てを話したい衝動に何度も駆られ始める。
その思いは潮の満ち引きのように何度も押し寄せる。
後藤はあせらず辛抱強く話題を転がしていく。
後藤の方からいろんな打ち明け話を振ってみる。
仕事がハードだとか、上司が恐いだとか、人間って複雑よねとか。
圭織は酔いと、後藤への親近感と、そして今まで耐えてきた重さに負けて
妹の秘密を語り始めた。



家の外では月が見守っている。

78 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:37:30
「形見」

6月17日 のぞみが生まれた。普通の子は最初満足にお乳を飲めなくて痩せたりするのにすくすく育っていく。
     この子は人一倍元気一杯な明るい子になりそう。

7月10日 どうも貧血気味。お母さんほうれん草たくさん食べてがんばるね。

8月23日 あまりに貧血が続くのでミルクを試してみるが、のぞみは母乳の方が好きなんだね



6月17日 のぞみの1歳の誕生日。ケーキが分るかな?



9月4日 4才になったけど乳離れが出来ないね。お乳はもう出てないんだけど、不安なのかな?



3月30日 5歳になって乳離れは出来た。やっとお姉さんだね
    抱っこすると首筋にちゅーするのが大好きなんだね。



5月13日 のぞみが不思議な遊びを教えてくれる。目を疑う。
    たくさん驚いて、喜ばせてあげた。
    お母さんにしか見せないでね。二人の秘密。楽しいでしょ?



11月27日 何があっても守るから。




母の臨終の場で秘密を明かされると同時に渡された日記。
圭織はそれを厳重に保存している。
これは母からののぞみへの贈り物だから。
いつかのぞみに手渡すその日までは絶対誰にも見せはしない。

79 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:38:49
「在るべき場所」

圭織は突然のぞみへの保護本能が噴出した。
圭織「なーんてね、こういうこと妄想してブルースを歌うのよ。
   とっても切なくなって、たまらなくなって、声に出てゆくの」

後藤「じゃぁ今度は私の妄想を聞かせてあげる・・・」


圭織は氷と新しい酒を用意してきた。
なんだろう、すごくリアルな話だったな。
ブルース歌う人って皆そういうことやってるひと多いのかな?

後藤「現実なんてさ、簡単に壊れるんだよね」
圭織「え、何・・・」

後藤が指先を八重歯のあたりに持っていく。すると勝手に指の腹から血球が・・・

80 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:39:18
圭織「わ、私の、のぞみをどうする気!」
今になって何故あなたは現れたの?圭織はパニックに陥っていた。

返答次第では殺されかねないね。

圭織「私から奪うの!仲間だから!・・・なかま・・・」
圭織の中で何かが目まぐるしく組み立て上げられていく。
のぞみの幸せ 例え自分は悲しくても

後藤「いっしょに来たらいいじゃん」
しまった。同情しすぎて・・・いや、私だって気心知れた親友は一人でもたくさん欲しいけれど。

圭織が固まる。諦めようとしていた矢先の月明かりにも似た光明。

後藤「私らの仲間の方があなたの歌を求めてるよ」
誰か止めてくれー!

圭織「・・・どうやったら、吸・・・仲間になれるの?」

後藤「だーかーら、そのままでいいんだってー」
後藤は覚悟を決めた。こうなったら後藤は無敵だ。
いや無敵だと一瞬思うだけで、後で藤本先生に怒られてへこむの分ってるんだけど。

急に緊張が解けて酔いが回ったのか圭織は意識を失ってしまった。

後藤は圭織をベッドに寝かせてやって
後藤「さっさと、報告に帰らないとまずいなぁ」




81 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:39:34
後藤は朝御飯を作って、のぞみのお弁当まで作って圭織と一緒にのぞみを送り出した。
のぞみ「お姉ちゃん、帰ったら遊ぼうねー」
後藤「待ってるぞー」
だから私を止めて。

圭織「あの、昨日酔ってって興奮しちゃって、じっくりお話聞かせてもらえる?」
後藤「おう!私ももっとお話したいし」
おお!神よ!

82 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:40:09
「報告」

後藤は帰ると、どんな叱責食らうのかと、気分が悪くなるぐらい頭の中でシミュレートした。
・・・胃が痛い
覚悟を決めて藤本の部屋へ。


藤本「話めんどいからはしょるけど、お咎めは無し。今度中澤姐さんに会ったら礼言っときなさい。以上。
   ああ一言だけ、本当にご苦労様」
後藤はほっぺをつねった。現実のようだ。
藤本「・・・ほら、次の仕事」
後藤「ふぇい」
後藤は狐につままれたような気分で藤本の部屋から出た。
後藤「ああ!一仕事終わったのに、休日は・・・はめられたぁ!」

藤本は意地悪くほくそ笑んでいた。
藤本「一晩飲んで歌って次の日も遊んでたようなもんだからいいっしょ」


通称「野末街」に二つの良いものが訪れた。
死人も踊りだしちゃうような明るい女の子と「レッドムーン」が。

第2章「レッドムーン」完

83 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2005/10/31(月) 21:46:03
今回アップ直前まで圭織を香織と間違えていた。カオタンファンに謝罪orz

84 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 16:57:29
第三章 「花屋の天使」

「警鐘」

「お兄さん、いいことしない?」


盛り場の路地裏で最近、貧血で失神している男性が見つかる事件が毎週のように起きている。

藤本「また、たちの悪いのが出たな。今ならまだうちの管理範囲内だ。」
胸に軽い痛みを覚えつつ
頭は迅速に事務処理的に命令を下す。
   
まだ死傷者が出ていないものの、これ以上騒ぎが大きくなれば
アーカム財団の手に管理権が渡る。
彼らの手に渡れば死しかない。
それをどうだと言うつもりはない。
魔女狩りとは比べ物にならないぐらい、アーカム財団は公明正大な組織なのだ。
藤本の元にはどんな些細な報告も必ず届く。
財団から直々に指名されて藤本は監査委員会にも入っている。
人間との共存のルールを守っていくのが一番なのだ。
我らは絶対的な捕食者になってはいけない。
その先には破滅しかないのだから。いや虚無か?

藤本「柴田気をつけてな」
柴田「了解」

85 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 16:58:33
詳細なレポートを思い出しつつ
柴田「誰一人殺してないんなら、やり直せる、居場所はある、必ずこっち側に引き込んでやる」
いつだってその希望は忘れない。希望が持てないならこんな仕事いつだって辞めてやる。

藤本と良く語り合う。
柴田「手段は選ばない。でも滅ぼすためなんかじゃない。そんな仕事は受けませんから!」
柴田は意思の強さを目に込めて言い放った。
藤本「そんな仕事振らないよ。そもそもそれなら財団が動くしね。」
どうしても滅ぼさないといけないなら、その罪は私が背負うさ。

柴田は藤本の目の翳りを見て、ふと落ち込む。
私またやっちゃった。そんなことはこの人が一番苦しんでいるのに。分ってたのに。
藤本さんの強さを見てると、時に頼りすぎて身勝手な事を思慮無く口走ってしまう。

藤本「なんて顔してるんだい?」
藤本の顔が急速に満月のような笑顔へ早代わり。
藤本「慰めて欲しいかい?」
藤本の目にいたずらっぽさと淫靡なものがまじっている。

尾庭骨のあたりから、「蛇」がむっくり頭をもたげ頭頂へ駆け登るのを必死に押さえ込む。
柴田「い、いえ、任務に向かいます!」
ずるいよ、そんなやり方。でも悪い気分ではない。

柴田「ほんと、いろんな手管を知ってるんだから」
後藤さんはかなりおもちゃにされてるし、
私には、ふと本音をのぞかせたり。そしてからかわれたり。

医者だけあって一人一人の心の襞に巧みに触れてくる。
赤ん坊を抱くようにやさしく、しかししっかりと。暖かく、でも押し付けがましくなく。
いやそれは仕事としてだけでなく、仲間としても。
全部は打ち明けてくれないけど、でも打ち明けられた日には私なんかあっという間に押し流されちゃうんだろうなあ。

86 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 16:59:10
保田博士と電話してる姿をふと思い出す。
柴田「すごくいい笑顔だよね。妬けるなあ、私もあんな笑顔にさせたいのに」

あれはあれでお互い「人と吸血鬼のあるべき姿」のポーズであることも間違いない。
でも、芝居だったら、すぐ分る。むしろ逆効果。
さて、益体も無い事考えるのはこのぐらいにして

柴田「任務に集中!」
柴田の顔が引き締まる。

87 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 16:59:50
「看板娘」

今日も人気の花屋の娘さん。
男「なっちゃん、彼女の誕生日プレゼントなんだけどさぁ」
なつみ「うらやましいなぁ。なっちも素敵な彼氏が欲しいよ。
    どれをメインに仕上げましょうか?」

人は彼女を天使だという。
彼女の作る花束は必ず幸せを運んでくると。

中学生の男の子が顔を赤くして毎月一輪買いにきたり。
その花を見るから成績が上がるのか。

会社にも家庭にも飽きた男性が、笑顔に誘われて花を買ってみれば
妻が途端に上機嫌。仕事にも再びやりがいが出てきたとか。

ふさぎこみがちの女性に、なつみが声をかけて、
半ば無理やり花を持たせれば、途端に、人生が180度変わって前向きになったり。

やがて皆気付くのだ。花がきれいなのは確かだ。
しかし、なつみがすばらしいのだと。
花になつみの真心がつまっているのだと。
花の向こうになつみの笑顔が見えているのだと。

なつみ「今日もたくさんお日様あびて、水飲んで、しっかり笑顔を咲かすんだよ」
花は何も語らない?いやこんなに饒舌だよ!
花は皆を笑顔にさせるために生まれてきて、元気一杯花開くんだよ!
それを見た人も元気一杯笑うんだ!人だって笑うために生まれてきたんだ!
そんな人たちの顔を見るとなっちも元気になる。
なっちはこのために生まれてきたんだ!

88 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 17:00:22
なつみは家に帰り、一人きりになる。
このままの生活が続けば、何の不満もないのに。
お客さんの笑顔が見られるだけで私は充分なのに。
しかし「あれ」はやがて訪れる。
なつみ「なっちは何も悪くない、誰も悪くない、こんな運命にした神様が・・・」

なつみは夜の町へ繰り出す。
誰もそれをなつみだとは気付かない。
派手な服、濃い化粧。いやそんなもののせいではない。
その目に、天使のやさしさは一滴たりとも含まれていないから。

「お兄さん、いいことしない?」

催眠術で眠らせた後、血を吸う。
どんどん、血への欲望が膨れ上がっている。
これ以上吸うと相手が死ぬ、という直前
脳裏を一輪の花がかすめて、全霊を込めて牙を引き抜く。
「まだ、足りない」
さらに獲物を求めて彷徨う。


柴田「近いな」
男性を発見した後、救急車を呼んで、跡を付ける。
残り香を敏感に嗅ぎわけ追い詰めてゆく。
吸血した後のオーラは強い。

89 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 17:01:01
「ハント」

「お兄さん」

柴田「そこまでだよ」
なつみがはっと振り返る。すぐさま同族だと気付く。
なつみ「なっち悪い事してないよ。あなただって「するん」でしょ?」
柴田「私たちの所においでよ。人を襲わなくたって、いくらでも方法はあるよ」
なつみ「人を襲わない?何きれいごと言ってるの?人の生き血に変わるものなんてあるの?」
柴田「それじゃ、駄目なんだよ」
おそらく説得は無理か。血に酔っている最中。しかも「胃」はかなり拡張されているようだ。
私の力で大丈夫か?大丈夫さ!また友達を作るんだ!
なつみ「人と仲良くなんざ、笑わせるんじゃないよ」
二つの美しいコウモリが戦いを始めた。
一人は吸血コウモリ。
一人は人と吸血鬼の間を飛び交うもの。

吸血鬼同士の戦いは過酷だ。
催眠術に気を取られれば、その怪力の拳の一撃で止めを刺される
格闘に気を取られれば、不意に目を覗き込まれた瞬間、そこで終わり。
互いが裏を何重にもかき、気を抜いた一瞬に勝負は決まる。

90 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 17:01:30
なつみ「なっちの方が力は上だべ!」
初めての同族との対決で、血の滾るなつみ。
なつみの両手の爪がするどく伸びる。
柴田「ちっ戦闘タイプに覚醒しつつあるか!」
吸血鬼は本来持っている性質、また環境により様々な特性を開花させる。
戦闘タイプ。その両手の爪は、鋼鉄すら紙のように引き裂く。
柴田「これ以上覚醒が進まないうちに決着を着けないと」

なつみの鋭い爪をなんとか、避ける。
今のところ服一枚でギリギリ交わしている。
徐々にあらわになっていく火照った柴田の素肌。
単純に格闘術なら訓練された柴田の方が遥かに上だ。
しかし、吸血鬼の獲物を仕留める術は半ば本能じみて野生の獣の如く鋭い。
しかも相手は生身の生き血を吸い取った直後。
ミスカトニック大学製の血液パックとは力の増大率は比べ物にならない。
柴田はじりじり押されていく。

91 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 17:02:08
なつみ「あんたは上物だね。あんたの血を吸ったら、どんなにおいしいんだろう?」
なつみは夢中になっている。思う存分力を振るう快楽に。

柴田が一瞬足をすべらせ、バックステップで体制を立て直そうとする。
なつみ「のろまが!」
そのチャンスになつみは爪を大きく振りかぶり、全力を乗せ突き刺すべく大きく踏み込んだ。
そこで突然なつみは指一つさえ動かせなくなった。
なつみ「くっ、なんだべさ!?」
柴田「悪いね、こっちも仕事なんでね」
なつみは柴田がムーンストーンで巧みに描いた結界内に見事はまったのだ。
アーカム財団が吸血鬼の協力を得て、編み出した対吸血鬼魔術。
アーカム財団の守備範囲は膨大だ。
中国の奥地で見つかった古代遺跡を改修したその図書館「石覧絵野」には
世界中から収集された膨大な魔術書が収められている。
古代からの未だ封印解けぬものも含めて。

柴田「それってあたしにも効くんだよね」
ふとかすめた嫌な考えを頭を振って追い出した。

92 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 17:02:52
なつみ「なっち、殺される?」
その目は複雑だ。無念?悔恨?安堵感?やっと開放される?
柴田「あんたの「胃」は大きくなりすぎてるんだ。
   これから送られる所で、それを矯正するんだけれど・・・」
ふと送る側の柴田の方まで気分が沈み込みそうになり、気を持ち直す。
あたしがしっかり送り出さないでどうするのさ!

なつみ「生きてる価値はあるのかな?」
吸血鬼全員が必ず考えざるを得ない問い。
柴田「生きてる理由は何もないのかい?あるでしょ?あるはずだよ!」
一言ごとに語気を強める。

なつみは今までのことを振り返った。
たくさんの笑顔が浮かんでは消えていき・・・やがて目をつむったその視界が
笑顔一杯で埋め尽くされた。

なつみ「いいこと一つぐらいありそうだね」
柴田「一つあれば充分だよ。他にもいいこと見つかるよ。絶対!」
頭に藤本の笑顔を浮かべつつ、柴田も安心させる笑顔をがんばって作った。
私今回もちゃんと出来たかな、藤本さん?

93 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 17:03:18
花屋の天使はその日からいなくなった。
皆ひどく残念がったが、あの子は本当に天使だったんだね
天に帰ったんだねと、誰からと知らず囁かれ、
やがてふと思い出したように語られる存在となった。
そして、思い出した瞬間にただそれだけで心に安らぎを与える天使であり続けた。

94 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 17:03:49
「片隅で」

「てめえら何様のつもりだ!」


なつみは隔離施設にて、悪魔のように罵詈雑言を吐く日々を送っていた。
ここで飢餓に耐え切れず、崩壊してしまうものは多い。
もちろんいきなり過酷な「断食」を強いるわけではない。
綿密に診断した上で患者に合わせた断食が行われる。
血を吸う以外に生きる意味を持たないものは
自決を選ぶかのように崩壊するのだ。

血を好きなだけ飲み「胃」が拡張されてしまった者は、
力を増していく。どんどん血の快楽に溺れていく。加速度的に。
その果てにあるのはどちらにせよ破滅でしかない。
人を滅ぼした先に吸血鬼の未来は無い。
それ以前にいずれ供給量は追いつかなくなり自壊する。

95 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 17:04:15
発症レベルの低い者は、吸血本能を知らずに人間のまま死んでいく者も多い。
一番幸せと言えるかもしれない。

牙を使うことなく無意識に人と触れ合った瞬間にのみ極微量吸い取る者もほぼ同様。

血を吸わなければならないものの、運良く「胃」の小さいまま止まった者。
ある者は愛する人に打ち明け。ある者はずるがしこく窃取する。
この者たちも大して力は無い。いつまでもあの人は若いねえとかいわれる程度だ。

そして問題は「胃」が一定レベルを超えて膨れ上がってしまった者。
そこまで行けば吸血鬼は限りなく不老不死に近い。
供給が絶たれなければだが。

その多くは人にとって犯罪者になるような生き方しか選択肢は無い。

もしかしたら、うまくやっている奴はいるのかもしれない。
アーカム財団の目は鷹のようにするどい。
未開地の中にはうまく信仰対象としてなじんでいるものもいるのだとか。
アーカム財団はそういうものまでは駆逐しない。
というよりアーカム財団には何か意図があるというのももっぱらの噂である。

柴田「でも財団を疑ったら立ち行かないよ。気が済むまで内部監査に付き合えばいいんだ。
   それすらもやらせだとしたら?・・・疑い出したらきりが無い。」
これからも柴田は任務に就く。友達を増やすために。

96 名前:名無しなの :2005/11/20(日) 17:04:38
制限する知識と意味を理解し、我慢する意思を持たなければ、何より人と生きていく「思い」なくしては
「胃」は際限なく膨れ上がっていく。

地獄のような苦しみの中で、なつみの頭の中にはそれでも、小さな花が片隅に揺れていた。
控えめに、つつましやかに、しかし、精一杯花開いて。
花にはそれしか出来ないのだから。



97 名前:名無しなの :2005/12/20(火) 08:28:49
期待保全

98 名前:名無しなの :2006/01/22(日) 16:39:32
ho

99 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:16:16 ID:YSnPd69k
「狼と羊と鳩と熊 」#2

「狼さんのイライラを治すんだ!」

今回の登場動物

ミキティ 狼 イラついていつにもまして意地悪になってます

こんこん 羊 彼女はいらつくことあるんでしょうか?

ヤグチ 鳩 彼女はいらついても大丈夫。だって・・・

オグリ君 鷹 えーとだから大丈夫なんですね 別にそれが言いたいだけで登場しないんですけど

ヨシザワ 熊 作者は困った。このネタの世界観からするとこの先ずっと
       ハロモニの森に危機なんか絶対来ない気がする。まぁいっか

レイナ 仔虎 例え師匠(ミキティ)が怒っていても彼女はついていきます
       見えないぐらい後ろから

エリ  仔亀 リクガメなんですけど、本人はそう思ってないようで

サユミ 仔兎 彼女の可愛さは誰にも止める事は出来ない!
       いや諦めてるだけですけど

つんく 猿 森の長老らしい・・・

100 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:16:43 ID:YSnPd69k
ハロモニの森は今日もいい天気。

でも・・・

エリ「ミキティがイジワルなんです、私はミドリガメなんかじゃないって!」

レイナ「そ、そう、ひどいねえ」
いい加減気付いてほしいたい

エリ「もしかしてレイナも思ってるの?」

レイナ「そんなこと思ってないっちゃ!、エリは間違い無く可愛いミドリガメだよ!」
・・・お母さん今日もレイナはうそをついてしまいました

サユミ「ミキティがイジワルなの!、サユミは泣きすぎて目が真っ赤なの!」

レイナ「いやそれは最初から」
そもそも設定が兎なんだから手でうさちゃんピースしなくても

サユミ「耳じゃピースにならないの!」

レイナ「そ、そうですか」

エリ「私たちとミキティとどっちを取るの!」

レイナ「そんな、師匠と友達を比べるなんて」

サユミ「ミキティを何とかするまで、レイナとは遊んであげない!行こうエリ」

エリ「レイナがんばってねー」

救いを求めるかのように手を伸ばしかけたレイナを後に残して二人は楽しげに去っていきました。
・・・サユミがエリのペースを少しも考えずにぶっちぎって行ってしまいましたが

101 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:17:08 ID:YSnPd69k
レイナ「・・・どうしよう」
・・・仕方無い。それとなくイラついてる訳を聞き出してみるか・・・
いやその前にシミュレーションを

レイナ「師匠今日も相変わらずかっこいいですね!」
ミキティ「何だと、それは、俺が女の子らしくないってことか!」
・・・これじゃ駄目たい

レイナ「師匠今日も相変わらず輝いてますね!」
ミキティ「何だと、それは、俺のデコが大きいってことか!」
・・・これも駄目たい

レイナ「師匠、いいパット見つけ」
ミキティ「・・・」
こ、殺される!

「キャハハハハハ、何一人芝居やってんだよ」
上のほうから笑い声。
木の枝に雀が

ヤグチ「誰が雀だ!鳩だ鳩」

レイナ「そ、そんなこと思ってません!」
ヤグチ「顔に書いてあるんだよ」

レイナ「!だから皆レイナの心の中読むのか!」
ヤグチ「んなわけねーだろ。ってか思ってたんじゃん」
レイナ「やっぱり書いてあるのかー!」
ヤグチ「だーかーらー、お前分りやすいんだよ、それで何やってたんだよ?」

102 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:17:27 ID:YSnPd69k
レイナは訳を話しました。

ヤグチ「何だ最近日課に来ないと思ったら、イラついてんのか。生理か?」
レイナ「あのーアイドルがそういう話題は」
ヤグチ「あたしは解禁なんだよ!」
レイナ「いや、開き直られても」
ヤグチ「あ!逆か、来ないのか、だからゴム」

「ビッグバンアターック!」
颯爽と現れたヨシザワさんの鉄腕の一撃でヤグチは世界の果てまで弾き飛ばされた。
レイナ「・・・出番あって良かったですね」
ヨシザワ「ああ、ところで、ミキティの件だけど」
レイナ「いい解決策ありますか!」
ヨシザワ「こういうのはこんこんに相談してみろ!じゃ」
ヨシザワは来たと同じく颯爽と立ち去った。

レイナ「・・・師匠のイラつきの方を助けて欲しかった・・・
    こんこんさんの所に行ってみるか」

103 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:17:45 ID:YSnPd69k
こんこんは今日も日向ぼっこです。

じゃがいものおいしい季節になりましたなー
ほかほかじゃがいもにバターは最高ですなー
でもバター付け過ぎると後で気持ち悪くなるんですなー
でもやっぱり付けすぎちゃうんですなー

今日も白昼夢絶好調のようです


レイナ「こんこんさん」
こんこん「あら、レイナちゃんこんにちわ」
レイナ「あのー師匠が」
一通り説明し。

こんこん「ふーん、そうでしたか。来ないから心配してたんですよー。
     私から聞き出してみましょう」
レイナ「お願いします」
こんこん「でも私ミキちゃんが良く行く場所とか知らないんだよねー」
レイナ「それならまかして欲しいっちゃ」
こんこん「よろしく」

104 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:18:04 ID:YSnPd69k
師匠が機嫌悪い時に行く所といえば

ミキティ「ほら3回まわってワンって言え」
つんく「ワン!」
つんくさんは奴隷モードになってます・・・
つんくさんうれしそうなんですけど

こんこん「・・・うれしいのならいいか」
レイナ「いいんでしょうか?」
こんこん「まぁ新手の介護という事で」
時々こんこんさん悟りすぎてて恐い。

こんこん「ミキちゃーん。そろそろ飽きたでしょー、別の所行かなーい?」
ミキティ「こんこんか、ひさしぶりだな」
つんくさんで遊んだおかげで今は少しはマシなようです。
でも、いつものようにこんこんを触りには来ませんでした。

105 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:18:23 ID:YSnPd69k
こんこん「最近どうしたんですかー?」
ミキティ「眠れないんだよねー」
こんこん「不眠症でしたか、それはつらいですねー」
レイナ「寝るときに羊を数えれば」
ミキティ「めんどくさい」
レイナ「あうう」
こんこん「まずは、眠気を誘うハーブでも摘んできましょう」
ミキティ「さすが健康ヲタ。よし、レイナ行って来い!」
レイナ「い、いっしょに」
こんこん「ハーブも一つ一つ微妙に違うから、いっしょに行って選んだ方がいいですよ」
ミキティ「そういうもんか、仕方無いなぁ」
レイナ(こんこんさんがいてくれて良かった)

106 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:18:44 ID:YSnPd69k
ハロモニの森から歩いて歩いて、香る谷へ。
レイナ「いい香りがしてきたっちゃ」
ミキティ「鼻詰まってるから良く分んない」
レイナ「あうう」
こんこん「別に詰まってても効きますから大丈夫ですよ」
レイナ(こんこんさんいなかったら胃が持たないっちゃ)

次から次へとミキティを様々なハーブの所へ連れて行きます。

ネムクナール、マブタオチール、ウタ種、マドロミンetc

レイナ「効き目のありそうな名前っちゃ!」
ミキティ「センスが無い」
レイナ「あうう」
こんこん「名前はどうでもいいんですよ、大事なのは眠くなる事ですから」
レイナがふらとよろける。
レイナ「お、起きるっちゃ、師匠が眠くなるまで・・・zzz」
レイナがあっさり眠りに落ちました。

ミキティ「効果はあるようだな」
レイナの顔に落書きしてみる。全然反応がない。
ミキティ「今度ハーブでいたずらするか」
こんこん「そんなこといいですから次行きますよ」
ミキティ「へいへい」

107 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:19:02 ID:YSnPd69k
こんこん「うーん、全部駄目ですか。じゃぁ枕でも試してみますか」
ミキティ「枕なんぞで変わるもんかい?」
こんこん「意外と違いますよー。うちにいろいろありますから気に入ったらあげますよー」
こんこんはレイナを背負って自宅へむかいました。

そばがら、ひのきチップ、羽毛、羊毛、キャメル、パンヤetc

ミキティ「こんなに持っててどうするんだ?」
こんこん「その日の気分とか、疲れたときはこの不思議な石入れた奴とか、夏とか冬とか」
ミキティ「へー」
こんこん「どれでも好きなのからどうぞ」

ミキティは一つずつ実際に寝て使ってみます。
ミキティ「うーん、羊毛がいちばんしっくりきそうなんだけど今ひとつなぁ、なあこんこん」
こんこん「zzz」
ミキティ「お前もかよ・・・ふむ」
ミキティはこんこんの羊毛の感触をまず手で確かめました。
ミキティ「おう!やっぱこれだこれだ・・・zzz」

108 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:19:19 ID:YSnPd69k
こんこんがうたた寝から目覚めると、ミキティがぐっすり寝ています。
こんこん「うーん、起こすの悪いなぁ」
レイナ「なんか用あると?」
こんこん「そこの奥に私の御飯あるから取ってくれる?」
レイナ「お安いごようっちゃ!」
こんこんがちょこちょこ食べ始めます。
こんこん「寝てるミキちゃん可愛いねえ」
レイナ「脳にやきつけるっちゃ」
こんこん「ミキちゃんに言ったら怒るから二人の秘密ね」
レイナ「わかったっちゃ!」

109 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:19:33 ID:YSnPd69k
それ以降も眠れない夜になると、ミキティはこんこんの所へ泊りに行くようになりました。
そしてサユミとエリとレイナはまた仲良し三人組に戻りました。
相変わらずサユミはどんどん先に行き、エリはいつまで経っても追いつかず
二人の真ん中らへんでレイナは途方に暮れるのですが。

110 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:19:46 ID:YSnPd69k
ミキティ「でさぁ、こんこんの寝相がさぁ」
ヤグチ「なになに?」
こんこん「ばらすともういっしょに寝てあげませんよ!」
ミキティ「そう言うなよー」
レイナ(師匠の寝相もかわいいっちゃ)
ミキティ「何ニヤニヤしてるんだよ?」
レイナ「師匠の可愛い寝顔なんか見て無いっちゃ」
ミキティ「・・・何だと」
レイナ「はう!」

ミキティの不眠症は解消しましたがレイナの受難はまだまだ続きそうです。



111 名前:紺乱 ◆qTwEO5otsY :2006/02/12(日) 21:21:29 ID:YSnPd69k
何はともあれ皆様おつかれさまでした

112 名前:名無しなの :2006/02/12(日) 22:49:00 ID:3yy1RX2Y
よい作品にめぐりあえてよかったです。
また、どこかでめぐりあえたら・・・・。

おつかれさま&ありがとうございました。


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